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四国遍路日記 第1期 9日目 第24番 最御崎寺
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四国遍路日記 第1期 9日目 2001年10月16日(火)


 朝、目覚ましで起きる。前日は足が痛いというか熱を持ってあつく、よく眠れなかった。8時半くらいに一度寝て、12時くらいから1時間くらいはテレビを見て起きていたのだろうか。ちょうどスポーツニュースで、小野がオランダ発ゴールを決めていた。なかなか眠れない。それでも、両足に濡れたタオルを置いて、なんとか眠りについたようだった。

 6時に朝食をとる。生卵はなかったような気がする。Fさんと他の人についての話をする。この日の目標は24番の最御崎寺、そんなに大変ではないと思うのだが。

 Fさんは僕が準備をしている間に出発したようだ。この宿は正直なところ、一番昔風というか、普通の家風だった。よかったのは洋式トイレだったこと。足が辛くなっているのでゆっくり座って朝の仕事ができるというのは大きなことなのである。僕も用意ができ、あばあさんに挨拶をして出発する。静かでいいところですねというと、若い人がほとんど居なくてね、と。最後に、がんばってくださいね、と言ってくれた。

 午前中は休憩を取ることもなく、できるだけ歩きたい。6時40分くらいには宿を出たのでかなり進めるかも。民家のない、ただただ道路のところをひたすら歩く。何も無い、というわけではない。左手には太平洋がある。できるだけ道路の左側、海に近いところを歩く。防波堤の上を歩いているときは気持ちがよかった。身体半分くらいが海を向いているのだ。前の方にFさんが微かに見える。でも、僕の歩くペースでは追いつけそうもないようだ。

 ふと後ろを振り向くと、なんとRさんがいる。昨夜は僕の泊まったすぐ近くの明徳寺に泊まったとのこと。お接待してもらった「cafeふくなが」でこの寺はいつ行っても無料で泊めてもらえると教えてもらったらしい。食事は出ないので途中で買って、シャワーもあったとのこと。それにしてもみんな頑張って歩いている。彼の歩きは早く、僕を追い越してずっと先に行ってしまった。

 10時を過ぎた頃、宿の予約をする。どこにしたらいいのかよくわからない。宿坊がやっていそうだったのでとりあえず電話を入れるとOKの返事。23番の薬王寺で宿坊に泊まったことで、ずいぶんとイメージが変わってしまった。なによりも安く、お寺からすぐ近くというのが良い。

 途中から雨になってきた。ビニールのカッパを着る。雨の中を歩くのはほんとうに辛い。何でこんなことをやっているのだろうか、なんてことも考えてしまう。でも、杖をつき、自分ひとりじゃないんだということを感じる。弘法大師と一緒ということだけでなく、友人やその他、自分ひとりではなく、誰かがちゃんと見てくれていたり、大切に思ってくれていることなんじゃないかな、なんてことを思う。

 お昼ごはんをどこで食べるか悩む。悩むほどの選択はないのだけど。最初に食べようと思っていたところは休みでやっていない。地図に載ってはいてもやっていない店というのとても多いのである。そこからまた30分は歩く、いちおうやっていそうな喫茶店はあったが、なんとなく入りずらい。あと30分か1時間か頑張ればドライブインと名の付いているところがあったのでなんとかそこまで行くことにする。

 なんとか、「ドライブインミツウラ」というところにたどり着き昼食にする。1時半は過ぎていただろうか。客は高校生のアベックが一組。店員は2人ほどいた。

 カレーライスにオレンジジュースを注文する。なぜかだこの旅の間、どうしようもなくカレーが食べたかった。ご飯がすすみ、なおかつ食べやすいということもあったのだろうか。食べたくでもなかなか食べる機会がなかった。ここでようやく食べることができてすごい嬉しかった。食べ始めた頃だったろうか、店の入口に白装束の人が。Yさんだった。彼の前泊もだいぶ近くまで来ていたようだった。泊まったところの他の客はサーファーが多かったとのこと。

 実はさ、とYさんは言う。途中で辞めようかとも思ったりしているんだ、と。ちょっと信じられなかった。この遍路は2度目の旅だし、それ以外にもあちこち歩いている。なによりも、今回の旅は仕事を辞めて来ている。それでも辛いときがあるのだろうか。詳しいことを聞かなかったが、こんな雨の中を歩いているならば、どうしようもない気持ちにもなってくるのかもしれない。

 カレーライスを食べ終え、オレンジジュースを飲み、僕は先に出発することにする。

 雨は全く止みそうもない。まだまだ最御崎寺は遠く、けっこう辛い。そう言えば、雨は何かを洗い流してくれるということを聞いた。これまでの僕の女運の無さがこの雨で流されるのだろうと信じて歩く。途中でYさんに抜かれてしまった。彼の歩き方はとても元気だ。

 なんとか室戸岬へ、第24番の最御崎寺のある山のふもとまでたどり着く。山道を登っていくのだ。地図には25分から30分と書かれている。1時間くらいは覚悟してゆっくりと登っていく。途中に休憩所のようなところがあった。ひと休みし、リックから水を取り出しすぐに飲める状態にする。登りではどうしてもすぐに咽喉が渇いてしまう。咽喉を潤しながらの方がいい。右手に金剛杖、左手にペットボトルを持ち、ゆっくりとこの山の登っていく。ふと気がつくと、寺の入口だった。思っていたよりも楽に着いた。一礼をして寺の中に。人は少ない。静かだ。雨はここにきてますます強くなってきたようだ。

 リックの中から蝋燭と線香、納経帳を出したりするのだが、雨のためこれがとっても大変だった。傘は持ってはいるが強い雨、お参りが終わればあとは宿に入るだけ。うろうろしながらなんとか無事終了。お土産にこのお寺のお守りを買って終わりにする。

 本堂からちょっと歩くと、宿の「最御崎寺へんろセンター」はあった。裏から受付に行くのだけど、途中で先に着いていたYさんに会う。受付のところでは団体さんの納経帳の処理のようなことをしている。待ってください、と言われソファーのところで待つ。でも座るわけにはいかない。ズボンはずぶ濡れ状態だったのだ。

 ようやく受付をしてもらえたのだが、連絡してもらってます?と言われてしまう。なんとか部屋を取ってもらう。会計は先、鍵をもらいそのまま部屋へ。

 それにしても、この宿はこれまでで一番新しくきれいだった。まだできてそんなに経っていないのではないだろうか。部屋はなんとトイレまで付いていた。しかも洋式のウォシュレット付きである。6畳の畳の部屋だけでなく、入口が広く、洗面所もあり、奥にはちょっとした椅子とテーブルもある。外の景色は雨でほとんど見えなかったが山そのものの景色だった。しばらく休む。枕を出して横になる。目をつぶると眠ってしまいそうになる。

 5時になりお風呂に入りに行く。この風呂も素晴らしかった。ほとんど銭湯のような大きさである。入る人はほんの数人。一人になったときには、湯船で身体全体を伸ばしてゆっくりしていた。

 この宿のいいところは部屋と風呂だけでもなかった。食事も美味しかった。ちゃんと凝った美味しい食事だった。それにしても、凄いと感じたのは客は全部で6人しかいなかったことだ。受付のときに飛び込みで来た客がいたが、満室ですと断っていたのに。ただ、人手がいなさそうなので、こんな人数しか泊まれないのかもしれない。ちなみに宿のパンフレットには全25室、158人と書かれている。

 他の客は自転車で四国を周っているという人が2人、バイクが1人いた。お遍路とは関係ない雰囲気。ここはユースホステルでもあるのでちょっと違った客もいるのかもしれない。

 雨は止まない。天気予報では台風が来るとのこと。この時点で、ほとんど僕は旅を止めようかという気持ちになっていた。


◎ 第1期 9日目:約31.6キロ / 2001年10月16日(火)
◆ 第24番 最御崎寺
◇ 昼食:ドライブインミツウラ カレーライス・オレンジジュース 900円
◇ 宿:最御崎寺へんろセンター 6000円





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