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四国遍路日記 第3期 3日目 第38番 金剛福寺 足摺岬
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四国遍路日記 第3期 3日目 2002年10月20日(日)


 5時半に起きる。遍路宿での朝というのはけっこうまちまちだったりしている。自由に選択できるところもあれば、明確に決まっているようなところもある。この宿が明確かどうかはわからないが、6時に食事ということだった。歩き遍路にとってはもちろん朝は早い方がいい。

 起きてすぐに窓を開けるが、まだ雨は止んでいないようだ。

 6時からの食事は、生たまご、梅干し、しらす、さつまあげ、漬物、ご飯に味噌汁。宿のご主人がこれから先の行程についての話をしてくれる。お昼ご飯は窪津にある店で買った方がいいという。それから足摺岬までは食べるところはないとのこと。

 準備をして出かけるときに、すみませんが、と言ってゴミ袋をもらう。リックの中の濡れない工夫ということでご主人に、ゴミ袋を被せるのが一番いいのだと教えられたのでその通りにしようと思ったのだ。

 靴を履いているときには、靴についてのアドバイスも受ける。僕の靴はちょっとぴったりしすぎだと言う。少し余裕がないと距離が稼げないとのこと。靴紐を一度取り、最初の2段目までは空いた状態にして結びなおす。

四国遍路の景色 四国遍路の景色 四国遍路の景色

 6時半に歩き出す。まだ外は明るくなってそんなに経っていない状態。小雨の中をただただ、歩いて行く。しばらく歩くと左手の方に海が見えてくる。海岸道路を歩く。

 途中で歩き遍路の人と一緒になり、少し話をした。だいたい、何処から来ましたか、いつからですか、みたいな話になる。その人は区切りの3回目でこの日が3日目、名古屋から来たということだった。この日は民宿久百々というところに泊まっていて、足摺岬で1泊してもう一度同じ宿に泊まると言っていた。話をしたのはほんの少しの時間だったが、このあと抜いたり抜かれたり、何度か顔を合わせた。

 景色のいいところも何箇所かあった。夏は海水浴ができるのだろうか。静かなところだった。

 足がどうしても痛い。歩き難かった。靴紐の締め方を変えたことによって、足の前の部分に少し余裕ができた。もちろん、歩きやすい感じはするのだが、その代わり、足を持ち上げるときに甲の部分が疲れてしまうのだ。過去の履物のことを考えると、こうした違和感は何度か経験したことがあった。慣れていることが一番良いのだと思い、靴紐を結び直す。紐の先のほどけてしまっていて、この結び直しがけっこう大変だった。

 ただ、宿の主人にアドバイスされた通り、ややキツイかなと感じていることも確かではあった。次回の旅の課題とすることにしよう。3回目の旅でもまだまだ靴については悩む。難しいものだ。

四国遍路の景色 四国遍路の景色 四国遍路の景色

 この日の道は国道だけでなく遍路路もあった。距離的にはほとんどかわらないみたいだったので、遍路路の方に入る。雨は少し晴れてきていたので、少し歩くのを楽しもうかという余裕も出てきた。また、足摺岬で宿を取れば時間が余りそうな気もしていた。夕方までには余裕で着いてしまうはず。ただ、この時点ではまだどこまで行って宿を取るかも決めかねていた。

 遍路路は薮の中に入り、足場も悪くかなり辛いものだった。海岸にまで出てしまった。晴れていれば楽しいのだろうが、足元は濡れていて何度か転びそうになる。国道に戻ったところで少しほっとした。

 10時頃に窪津に着く。お弁当の売っている店はあった。けれど、雨がまた強くなってきていた。足摺岬まであと10キロほど。まだお昼には遠いし、途中で雨の中お昼ご飯を食べるというのも辛いような。がんばって足摺岬まで歩き、暖かな場所でゆっくりと食事にした方がいいように思えた。

 漁港の入口のところで雨の装備をしていると、足摺岬からこちらに歩いて来た女性もやはり雨の装備をしていた。この先、何人かの歩き遍路の人とすれ違うことになる。不思議な感覚だった。他にも何箇所は戻るようなところはあるわけだが、この道が最も頻繁に合うところだった。

四国遍路の景色 四国遍路の景色 四国遍路の景色

 かなり必死になって歩いた。国道なのに道路はぐっと狭くなった。まわりには家もあまり見当たらない。残念なことに道は山側に入り、海は見えない。

 朝少し話しをした遍路の人とまた一緒になる。他にもひとり、やや前後した状態で歩いた。しばらくすると、この後から見かけた遍路の人は小型トラックの荷台に乗って先へ行ってしまった。お接待しましょうか、と声を掛けられたならば受けてしまったかもしれない。この窪津から足摺岬までの約10キロ、3時間ほどの歩きはこれまでの遍路の中で最も辛いものだった。足の方は痛いということはなかったので、その点では辛くはなかったのだが。

 歩きながら考えたのは、今回の装備の失敗だったこと。次回はもっと雨対策をして、ということを何度も細かく考えた。リックも安いものではなく、丈夫で雨でも大丈夫なものにしようとか、次の旅のことを考え、前へ前へと進んだ。すれ違う歩き遍路の人には、雨傘を差しているだけ、という人もいた。一応すれ違うときに、歩く挨拶を交わすのだが、表情はみんな辛そうだった。

 もう少しだろう、もう少しだろう。祈るような気持ちで歩いた。林の中を歩いているような状態なので、前方があとどのくらいなのか全くわからないのである。目印になるような建物が見えるというわけでもない。12時は過ぎ、お腹も空いてきた。

 1時にようやく足摺岬に着いた。駐車場の案内のようなものがあって、少し歩くとすぐにジョン万次郎の銅像があった。すぐに金剛福寺に入りお参りをする。雨はまだまだ止まず、鞄の中からの必要なものの取り出しに手間取る。3日歩いてやっと辿り着いたお寺だった。ただ、正直なところお参りをするというよりも、早く終えて食事をしたい気持ちだった。納経帳は濡れてしまっていた。納経所の人には、「濡らしてはいけないんです」と怒られてしまう。もちろん、濡らした僕が悪いのだろう。気持ちの面でもかなり参っていた。

四国遍路の景色 四国遍路の景色 四国遍路の景色

 金剛福寺のすぐ向いのところにあるレストランで食事にした。お腹は減っているのだが、あまり元気に何かを食べるような気持ちでもない。カレーライスを注文した。美味しかった。食後にコーヒーも飲む。この数年、僕は基本的にコーヒーを飲まないことにしている。完全に、ということではないのでたまには飲むのだが。このときのコーヒーは温かく、身にしみるような美味しさだった。この旅では、この後何度かコーヒーを飲むことになる。

 雨はまだまだ止みそうもない。この旅で最も楽しみにしていた、四万十川、足摺岬という名所が大雨ということになった。足摺岬には、歩いて観光するコースがあり楽しみにしていたのだが、この雨ではとても歩く気にはなれない。

 それにしても時間はまだ2時を少し過ぎたくらい。できれば、もう少し歩いたところで宿に入りたい。けれど、ちょうどいいところに宿がなかったりする。良さそうなところに電話を入れてみたが、やっていないようで断られてしまった。地図と睨めっこをしてけっこうな時間を過ごす。悩んでも仕方がないのだが、このときは沈んだ気持ちだった。

四国遍路の景色 四国遍路の景色 四国遍路の景色

 時間的にはそろそろ宿に予約を入れなければならない。3日で足摺岬までという当初の目標はクリアしたわけなので、この近くに宿をとってもいいな、という考えになってきた。金剛福寺の宿坊であるユースホステルに電話をしてみると、ひと部屋だけ空いているということで決めてしまう。入口についてわかりにくいみたいなことで説明を受けたのだが、よく聞いていなかった。間違えて他のところに行ったり、少しうろうろしてようやくこの日の宿に辿り着いた。

 2時45分だった。まだ僕以外に客は来ていなかった。新聞紙をいくつかもらい、部屋で濡れたものを広げる。横になり、しばらくゆっくりと過ごした。少し時間の経ったところで風呂に入ってくださいとの連絡。4人くらいは入れる湯船の大きさだろうか。一番風呂に、ひとりで入る。これはかなり嬉しかった。

 部屋で休んでいると、ドタバタという音が凄い。団体客が来たらしいのだが、落ち着いて横になっている雰囲気ではなかった。

 夕食はかなり広い部屋だった。歩き遍路は僕ひとりで、他は全て団体の客だった。ちょっと早めに食べてくださいということで6時15分くらいから、ひとり、ぽつんと離れて食事をする。食事は美味しかった。これだけ安い値段で、これだけの満足できる料理が食べられるというのは嬉しいことだ。厨房で働いている人は地元のパートのおばさん達という雰囲気、人当たりがよくいい感じだった。支払いを済ませ、部屋へと戻る。

 ここはテレビがあるわけでもない。毎日宿で時間をあるときにはその日の出来事をメモに書いていたりしていたが、3日も経つとそろそろ嫌になってしまう。早めに布団に入ったが、あまりぐっすとと眠ることもなくなる。早く寝てしまうと、どうしても夜中に起きて眠れなくなってしまうし、起きていてもタイミングがズレると眠い気持ちが薄れてしまう。


◎ 第3期 3日目:約24.4キロ / 2002年10月20日(日)
◇ 昼食:レストラン カレーライス+コーヒー 1000円
◇ 宿泊:金剛福寺ユースホステル 5775円





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