四国遍路日記 第3期 6日目 2002年10月23日(水)
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7時に朝ご飯を食べる。食事を作ってくれた女性が少し話をしてくれた。歩いていることに対して、大変ですね、みたいなことである。食事は朝からけっこうボリュームのあるものだった。
7時20分頃に宿を出て歩き出した。歩いていることが一番落ち着くことでもある。この日は第39番延光寺に行くという明確な目的がある。やはりお寺をまわってこその遍路旅である。気も引き締まる。道は狭い市街地へと入る。左手に海が見えてくる。ただ、入り江のような海だ。空は少しどんよりとしていた。雨は降りそうもないが、空が青い色をしていないということはやはり寂しい。
9時半頃、途中の道の駅で休憩を取ることにする。レストランでコーヒーを飲もうと思ったが、外の芝生の公園が綺麗だったので、ベンチに座り、海を見ながら缶コーヒーを飲む。すぐ近くでは親子がボールを蹴って遊んでいた。
地図を見て、この後の日程の確認をする。休憩を終えて公衆電話で、この日の夜と翌日の夜の宿の予約を入れる。この日の予定の宿毛市内にはビジネスホテルが多くあった。民宿などと比べると部屋数も多いわけで、予約は大丈夫だろうと思っていた。けれど最初に電話を入れたところでは満室ということで断られてしまった。2軒目の電話で無事に予約が取れた。いかにもホテルという雰囲気の電話対応だった。続いて翌日の宿の予約も。こちらの方は日本風の旅館。「歩いているものです」というとすぐに通じて、とても良い雰囲気で対応してくれた。
2日分の宿が取れたということで、とても安心した。逆に早くも旅が終盤の方に入っているということを感じる。
松田川大橋ということろを渡り、宿毛市街地へと入る。たぶん、この日の宿はここからそう遠くないわけだが、延光寺は7キロほど先へあり、もう一度戻ってくることになる。川沿いの道を歩く。子供の頃に住んだいた川のことを思い出した。そんなに大きな川ではなかったけれど、河原があり、土手があった。毎日そこを走り回って遊んでいた。山の見える景色は似ていたようにも思える。
左手には高架線の鉄道が走っている。土佐くろしお鉄道というローカル線である。駅はとても駅とは思えないような感じ。モノレールといった方が雰囲気は似ているかもしれない。
道は国道56線に入り、頻繁に車の通る道を歩いて行く。両側には飲食店も多い。どこかで休んで行こうかとも思ったが、まずはお寺まで行こうと歩く。この宿毛市街地から延光寺までの道のりはとても長かったように思えた。自然の景色の中を歩くのと、こうした多くの看板のある建物の中を歩くのとでは、その感覚は違っているのだろうか。国道を左に曲がり、次第に細くなり道を進む。地図には何件かの宿が載っていたがそれはとても小さなところだった。
12時半ころに第39番延光寺に着く。ほとんど人はいなかった。お参りをして、ベンチに座りしばらく佇んでいた。ときどき眼を閉じてみる。特に何かを感じたということはない。疲れていて、そろそろお腹が空いてきていて。
また歩き出す。考えてみるとこの日の残りの距離は7キロほどであった。かなり時間は余ってしまうだろう。もっと先まで行けばよかったとも思う。けれど、残りの日数で交通の便のいいところで旅を終えようとするならば、それにりに日程は決まってくる。結局のところいつも悩みながら歩いている。結果としてはそんなに失敗もなく、ここまで順調な旅が続いているのだけど。
この道は、先ほど歩いたところを逆に進んでいることになる。当然、景色も同じもの。ときにはこういうこともあるのだろうが、面白くもなかった。
1時半頃に「ラーメン豚太郎」という店に入り、焼き蕎麦と餃子を食べる。この通りにはいくつかの飲食店があったのだが、あまり迷うこともなくこの店に決めた。そろそろ、宿に出ることのない油っこい俗世間の料理を食べたくなってきていたのだ。あと、四国ではこの店の名前があちこちで目につき、一度食べてみたいと思っていたのだった(笑)。
再び道を歩く。しかしこの日は、休憩と時間調整の意味でこのあと2軒も店に入ることとなった。
4時過ぎにこの日の宿「秋沢ホテル」に入る。小さなビジネスホテルだとばかり思っていたのだが、結婚式もやるような大きなホテルだった。フロアは大きく、フロントの人の頭の下げ方もとてもしっかりとしていた。名前を言うとすぐに「お待ちしておりました」と話が通じる。
部屋に行く途中に、大浴場の案内が目に入る。ホテルというと、お風呂が狭くてというイメージがあったりするが、こういう大浴場のあるところもあったりする。これは嬉しい。エレベーターに乗り、部屋へと入る。そんなに綺麗な雰囲気はないが、ツインルームでかなりの広さだった。ソファーがあり、机もある。朝食付で5000円(税別)という値段であれば、かなりお徳だろう。
たまにはこうしたホテルでゆっくりするのもいい。夕食をどうしようかと悩んでいた。通常ホテルにはレストランなどがあるのだが、回転寿司になっている。食べ放題と書かれてあったが、この日はどうしようもなく肉を食べたい気持ちになっていた。ホテルを出て、外のコンビニで生姜焼き弁当と巻き寿司を買う。風呂に入ってから部屋でゆっくりと食べることにした。
買い物の後、浴衣に着替えて大浴場へと行く。通常の銭湯と同じくらいの、広いお風呂なのだが、誰も入っている人はいなかった。両手両足をめいっぱい広げる。ある意味で贅沢なひと時なのだろう。旅に出なければ普段は仕事をしている時間である。もちろん、仕事のことはもうほとんど忘れているが。
部屋に戻り、シャツとパンツだけの姿でベッドの上に胡座をかいて、さきほど買ってきた弁当を食べる。コンビニ弁当とは言っても、手作りのもので、とても美味しかった。テレビは衛星放送が入っていて、サッカーをやっていた。部屋に置かれてあった小さなポットでお湯を温めて何倍もお茶を飲んだ。
次の日は峠道を歩くことになっている。どのくらい、その道が厳しいかは地図の上だけではよくわからない。自分の足がどのくらい歩けるのかもよくわからない。不安もある。けれど、ぎりぎりまで汗を流し歩いてみたいという気持ちもある。
◎ 第3期 6日目:約26.2キロ / 2002年10月23日(水)
◆ 第39番 延光寺
◇ 昼食:ラーメン豚太郎 焼き蕎麦と餃子
◇ 夕食:ヤマザキショップ宿毛店 生姜焼き弁当と巻き寿司 829円
◇ 宿泊:秋沢ホテル(朝食のみ) 5250円
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